2-道徳とよき性質
● よき人格の徳:
1-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてあなたはこの上ない人格を備えている。,(クルアーン68:4)
2-アブー・アッ=ダルダーゥ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「よき人格よりも(審判の日)の(善行の)秤に重いものはない。」(アブー・ダーウードとアッ=ティルミズィーの伝承[1])
3-アムル・ブン・シュアイブがその父親から、そしてその父親が祖父から、そしてその祖父がアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)から伝えるところによれば、彼は言いました:「“最も私の寵愛を享受し、かつ審判の日に私から最も近い場所に座を占める者を教えてやろうか?”すると人々は黙り込みました。それで(アッラーの使徒が)それを2回、あるいは3回繰り返すと、人々は言いました:“是非とも、アッラーの使徒よ。”すると彼は言いました:“(それは)最も人格の優れた者である。”」(アル=ブハーリーとアフマドの伝承[2])
● 最もイーマーン[3]の完全な者は、最も人格の優れた者です。信仰者は優れた人格によって、サラー(礼拝)しサウム(斎戒、いわゆる断食)に勤める者の位階にまで達するのです。そして最も優れた人間は最も人格の優れた者であり、最も優れた信仰者とは最も人格の優れた者なのです。ゆえに優れた人格を身に付けることは、金銀を収集することよりも遥かに優れたことなのです。
アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「人々はちょうど金銀の鉱脈のような、鉱脈である[4]。そしてジャーヒリーヤ(イスラーム以前の無明時代)において最良であった者は、もし宗教理解を得るならば、イスラームにおいても最良であるのだ。そして魂は(それぞれ)多様に異なった形で集まり合っている。それゆえ互いに似通った者たちは近付き合い、互いに異なった者たちは遠ざかり合うのだ。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[5])
● 最も人格と性質の優れた者:
よき人格と性質を身に付ける、最も容易くかつ最善の方法は預言者ムハンマド(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の手法を模範とすることです。彼の人格はクルアーンそのものであり、彼は人々の内で最も優れた内面的及び外面的性質を備えた者でした。彼は持たざる者には与え、彼を虐げる者を許し、親戚関係を絶つ者に対しては良い縁を取り持ち、悪に対しては善行でもって返しました。このような事柄が人格の基礎なのであり、私たちがあらゆる状況において彼の手法を踏襲すべきゆえんなのです。ただアッラーが預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)に特別に定められたことは別であり、よく知られているように預言者性や啓示、5人以上の女性との婚姻、彼が結婚した女性は彼以後には他の男性と結婚できないこと、サダカ(施し物)に手を付けないこと、遺産を残さないこと、などにおいては彼以外の者がそれを真似することは出来ません。
● ここでは預言者ムハンマド(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がそこへといざない、それらを身に付けるように人々を促したところの重要な人格や性質、また彼が備えていた道徳律について取り上げました。それはそれらが全てのムスリムの良い模範となり、また私たちがそれを身に付け、そしてそれを積極的に取り入れていくようにすることを目的とするからなのです。
1-至高のアッラーはこう仰られました:-アッラー(との謁見)と来世を望み、アッラーをよく念唱する者にとって、アッラーの使徒は実に良い模範である。,(クルアーン33:21)
2-至高のアッラーはこう仰られました:-許しの心を持ち、善を命じ、無知な者たちから遠ざかれ。,(クルアーン7:199)
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の美徳とよき人格:
1-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてあなたはこの上ない人格を備えている。,(クルアーン68:4)
2-アブドッラー・ブン・アムル(彼らにアッラーのご満悦あれ)は言いました:「預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は下品なことを口にすることもなければ、卑俗な性質でもありませんでした。そしてこう言っていたものです:“あなた方の内で最良の者は、もっとも人格の優れた者である。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[6])
3-アナス(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私は10年間預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)に仕えましたが、彼は私に対して文句を言うこともなければ、“どうしてそんなことをした?”とか“どうしてこうしなかった?”とか責めることはありませんでした。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[7])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の心の広さ:
1-ジャービル(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「預言者は、何かを請われてそれを断ることはありませんでした。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[8])
2-イブン・アッバース(彼らにアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は最良のお方でしたが、ラマダーン月にジブリール(ガブリエル)と出会われる時には一層良きお方となりました。彼はラマダーン月には毎晩彼と会い、クルアーンを学んだのです。アッラーの使徒はその善において、恵み深い風よりも良きお方でした。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[9])
3-アナス(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は、イスラームゆえに何かを請われて、それを与えないことはありませんでした。ある男が彼のもとを訪れた時、彼は男に山2つの間の羊の群れ全てを贈与しました。男は自分の民のもとに帰ると、こう言いました:“民よ、イスラームを受け入れるのだ。ムハンマドは(この先私たちが)貧困の恐れ(に遭遇すること)もない位の贈り物をしてくれたのだから。”」(ムスリムの伝承[10])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の羞恥心:
1-アブー・サイード・アル=フドゥリー(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は寝室の乙女よりも羞恥心の強いお方でした。そして彼が何かを嫌っている時には、私たちはその表情からそのことを察することが出来たものです。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[11])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の慎み深さ:
1-ウマル・ブン・アル=ハッターブ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私は預言者(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)がこう言うのを聞きました:“キリスト教徒がマルヤムの子(イーサーのこと)の讃美において度を越したように、私のことを度を越して称えてはならない。私はかれ(アッラー)のしもべの1人に過ぎないのだ。それゆえ(私のことを)こう言うがよい:アッラーのしもべ、アッラーの使徒、と。”」(アル=ブハーリーの伝承[12])
2-アナス(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、少々知性の衰えた女性がこう言いました:「“アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)よ、あなたに頼みごとがあります。”(アッラーの使徒は)言いました:“何某の母よ。ちょっとそちらに行きましょう。あなたの頼み事を叶えてやりますから。”それから彼は彼女と道を少し進んで2人きりになると、彼女の頼み事に応えました。」(ムスリムの伝承[13])
3-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「もし(羊の)腕か、あるいは足(の部分のみの質素な食事)に招待されたとしても、私は応じよう。またもし(羊の)腕か、あるいは足(の部分のみ)を贈られたとしても、私はそれを快く受け入れたであろう。」(アル=ブハーリーの伝承[14])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の勇敢さ:
1-アナス(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は最善かつ最良のお方でしたが、また最も勇敢なお方でもありました。ある晩マディーナの民が(何らかの大きな音を聞いて)恐怖に陥ったことがありましたが、その時人々はその音の方へ(偵察に)向かいました。すると彼らは、その方向からやって来るアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)と出会いました。彼は人々よりいち早く音の方へ向かったのであり、アブー・タルハの裸馬に乗って剣を首からぶら下げていました。そしてこう言っていました:“恐れるのではない。恐れるのではない”そして私たちはその馬が駿馬であることを知りました。あるいは確かに駿馬であると知ったのです。そしてその馬は、(その時私たちが見た時)以前は足の遅い馬でした。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[15])
2-アリー(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私はバドル(の戦役)の日、(戦いに)参加しましたが、私たちはアッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)を頼みの綱として(戦って)いました。彼は敵に一番近い所に留まり、その日最も力強い者でした。」(アフマドの伝承[16])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の哀れみ深さ:
1-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、(ある時)1人のベドウィンの男がモスクの中で小便をしました。人々は彼に襲い掛からんとして一斉に立ち上がりましたが、そこでアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「彼を放っておけ。そして小便(で汚れた場所)にバケツ1杯分の水をかけるのだ。あなた方は物事を簡易にするように遣わされたのであり、困難にするために遣わされたわけではないのだから。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[17])
2-アナス・ブン・マーリク(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「預言者(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“(物事を)容易くし、困難にするのではない。そして(人々を)安らがせ、遠ざからせるのではない。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[18])
3-アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「アーイシャよ、アッラーはお優しいお方であり、ゆえに優しさを愛でられる。そして優しさに対して、荒々しさやその他の何ものに対しても与えられないものを与えられるのだ。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[19])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の許しの心:
1-至高のアッラーはこう仰られました:-ゆえに彼らを許し、大目に見てやるのだ。実にアッラーは善行の民を愛でられる。,(クルアーン5:13)
2-アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は2つの選択肢がある時、それが罪とならない限り、常に容易な方を選んだものです。そして罪となることからは、最も縁遠いお方でした。またアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は自らに関することにおいて報復することはありませんでしたが、アッラーの神聖さが侵された時だけはアッラーゆえに報復の処置をとったものでした。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[20])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の慈悲の心:
1-アブー・クターダ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はその肩にウマーマ・ビント・アビー・アル=アースを抱いて現れると、礼拝しました。そして彼がルクーゥ(お辞儀のような形の礼)する時は彼女を足元に置き、そこから起立する時には彼女を抱え上げました。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[21])
2-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)はアル=アクラァ・ブン・ハービス・アッ=タミーミーの座っている前で、(彼の孫)アル=ハサン・ブン・アリーにキスをしました。するとアル=アクラァは言いました:“私には10人の子供がいるが、その誰にもキスしたことなどない。”するとアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は彼に目をやり、こう言いました:“慈悲のない者は、慈悲をかけられることもない。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[22])
3-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「人々を礼拝で先導する時には、長引かないようにするのだ。というのも礼拝者の中には弱者や病人、年配者などがいるからである。しかし1人で礼拝する時には、好きなだけ長引かせるがよい。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[23])
4-そして預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はその小間使いに対し、次のような言葉でその慈悲心を示しています:「彼らはアッラーがあなた方の手に委ねられたところの、あなた方の兄弟である。それゆえあなた方が食べるものを彼らにも与え、あなた方が着るものを彼らにも着せるのだ。そして彼らに、彼らが耐え切れないような負荷を課してはならない。もしそうするのであれば、手を貸してやるのだ。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[24])
5-また預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は、その敵にさえも慈悲心を示しました。アナス(彼にアッラーのご満悦あれ)は言っています:「ユダヤ教徒の小間使いの少年が1人、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)に仕えていましたが、(ある時)彼は病に冒されました。預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は彼を見舞い、彼の頭の近くに腰を下すと、こう言いました:“イスラームを受け入れよ。”すると少年は、そこに居合わせていた父親の方を伺いました。(父親は)彼に言いました:“アブー・アル=カースィム(の言うこと)に従え。”そして(少年は)イスラームを受け入れました。預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はそこを後にすると、こう言いました:“彼を地獄から救われたアッラーにこそ、全ての賞賛はあり。”」(アル=ブハーリーの伝承[25])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の笑い:
1-アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私は、預言者(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)が口を大きく開けて、笑い崩れるのを見たことがありません。彼は微笑むだけでした。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[26])
2-ジャリール(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私がイスラームを受け入れてからというもの、預言者(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は私を遠ざけたりすることがありませんでした。また私を見る時は、いつもその顔に微笑を浮かべていたものです。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[27])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の嗚咽:
1-アブドッラー・ブン・マスウード(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「預言者(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は私にこう言いました:“(クルアーンを)読んでくれ。”私は言いました:“アッラーの使徒よ、あなたに啓示されたものをあなたの前で読むというのですか?”(預言者は)言いました:“ああ。読むのだ。”それで私は女人章を読みましたが、-それで(審判の日)われら(アッラーのこと)が全ての民に(アッラーの御言葉を彼らに伝えた)証人を連れて来たら、そしてあなたを彼ら(不信仰者たち)への証人として連れて来たら、(彼らは一体)どうするつもりだというのか?,(クルアーン4:41)という句に差し掛かった時、(預言者は)“そこまででよい。”と言いました。顔を上げて見てみれば、彼の両目からは涙が溢れ出ていました。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[28])
2-アブドッラー・ブン・シュハイル(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私はアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)が礼拝している折、彼がその胸の辺りから、ひきうすを回したときに出るような(低くこごもった)嗚咽を漏らしているのを見ました。」(アブー・ダーウードとアン=ナサーイーの伝承[29])
● アッラーに関することにおける預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の怒り:
1-アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「預言者(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)が私の部屋に入って来た時、そこには肖像画が描かれた薄手のカーテンがありました。(それを見ると)彼の表情は一変し、カーテンを掴むと、それを引きちぎりました。そして預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:“これらの物を創作する者たちは、審判の日最も厳しい罰を受ける者たちの仲間となるであろう。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[30])
2-アブー・マスウード(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「ある男が預言者(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)のもとにやって来て、こう言いました:“何某が礼拝(を率いる際にそれ)をとても長引かせるので、私は早朝の(集団)礼拝に参加するのが億劫です。”」そして私はその日ほど、預言者が訓戒において激しい怒りを表したのを見た事がありませんでした。彼は言いました:“人々(礼拝を率いる者たち)よ、あなた方は(礼拝者たち)に嫌な思いをさせている。人々を礼拝で率いるのなら、軽く済ませるのだ。彼らの中には病人や弱者や用事のある者たちもいるのだから。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[31])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の彼のウンマ(共同体)に対する哀れみの心:
1-至高のアッラーはこう仰られました:-あなた方のもとに、あなた方自身の内から1人の使徒(ムハンマド)が到来したのである。(彼は)あなた方の(現世と来世における)苦しみを身に沁みて辛く思い、あなた方(が懲罰を受けず信仰にはいること)に懸命で、信仰者たちに哀れみ深く、慈悲深いのである。,(クルアーン9:128)
2-ジャービル(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“私とあなた方(の関係)を例えて言うならば、ある者が火を焚いた所にバッタや蛾が飛び込んで来たのを追い払うようなものである。そして私こそはあなた方のズボンを掴んで、あなた方を地獄(の原因となる諸要因)から遠ざける者なのである。それにも拘らず、あなた方は私の手を離れて果敢にそこへと飛び込んで行こうとするのだ。”」(ムスリムの伝承[32])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の人々に対する愉快さ
アナス・ブン・マーリク(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は私たちを訪れ、私の幼い弟にこう冗談を言いました:“アブー・ウマイルよ、アン=ヌガイル[33]はどうしたのだ?”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[34])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の禁欲さ:
1-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“アッラーよ、ムハンマドの家族に(最低限の生活に足りるだけの)糧をお恵み下さい。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[35])
2-アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「ムハンマドの家族はマディーナ移住後から彼の死まで、3晩連続でパンを満足に食べたことはありませんでした。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[36])
3-ウルワがアーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)から伝えるところによれば、彼女はこう言ったものでした:「“アッラーにかけて、私の甥よ。私たちは三日月を見、その後また三日月を見、更にまた三日月を見ました‐つまり2ヶ月間で3度三日月を見たのです‐が、(その間)アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の家ではかまどに1度たりとも火がともらないという時がありました。”私(つまりウルワ)は言いました:“叔母さん、一体何を生きるための糧としていたんですか?”(アーイシャは)言いました:“2つの黒いもの‐つまりナツメヤシの実と、水です。そしてアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)にはアンサール[37]の隣人たちがおり、彼らには家畜がありました。それで彼らがアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)にその乳を贈り、私たちはそれを飲んでいたのです。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[38])
4-アムル・ブン・アル=ハーリス(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は(彼が他界した時)、1ディーナール、あるいは1ディルハム、また1人の男女の奴隷も残しませんでした。ただ、彼が生前乗っていた1頭の白いラバと1本の剣、そして旅人へのサダカ(施し)とした土地のみを残しただけだったのです。」(アル=ブハーリーの伝承[39])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の公正さ:
アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)によれば、(ある時)マフズーミー部族のある女性が盗みを犯した事が、クライシュ族を悩ませていました・・‐中略‐:それでウサーマ・ブン・ザイドがアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)に(その女性の刑罰を免除してもらおうとして)話すと、彼は言いました:「アッラーの刑罰においてとりなそうというのか?」そして立ち上がり、説教してからこう言いました:「あなた方以前の者たちは、高貴な者が盗みを犯せば放免し、弱者が盗みを犯せば刑を執行する、などということをしていたために滅亡したのだ。アッラーに誓って。もしムハンマドの娘ファーティマが盗みを犯すようなことがあれば、私は彼女の手を切るぞ。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[40])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の寛大さ:
1-アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「“アッラーの使徒よ、あなたにとってウフドの戦役よりも過酷な時はありましたか?”アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“私はあなたの民(クライシュ族)より(過酷な迫害を)被った。そしてその中でも最も過酷なものがアカバの日のそれだった。私はイブン・アブド・ヤーリール・ブン・アブド・クラールにイスラームを提示したが、彼は私の望みに応じなかった。それで私は落胆して去り、カルン・アッ=サアーリブ[41]に到着するまで放心状態にあった。そしてそこで顔を上げた時、私は雲の陰に覆われていた。見れば、その雲の中にはジブリール(ガブリエル)がいた。
(ジブリールは私を呼んで)言った:「偉大かつ荘厳なるアッラーはあなたの民の言葉と、あなたに対する彼らの返答をお聞きになられた。それでかれはあなたが(今)彼らに対して望むことを命じさせるべく、山の天使をあなたに遣わされたのだ。」すると山の天使は私を呼び、私に挨拶すると、こう言った:「ムハンマドよ。アッラーはあなたに対するあなたの民の言葉をお聞きになられた。そして私が山の天使である。あなたの主は、あなたのために私を遣わされたのだ。一体あなたは私に何をお望みか?お望みならアル=アフシャバーン[42]でもって、彼らを一潰しにしてやるぞ。」
それで私は言った:「いや。私はアッラーが彼らの子孫の中から、かれのみを崇拝して何ものをもかれに並べることのない者たちが生まれ出ることを望むのだ。」”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[43])
● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の忍耐強さ:
1-アブドッラー・ブン・マスウード(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私がアッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)のもとを訪れた時、彼は具合を悪くされていました。それで私は彼を両手でさすり、こう言いました:“ひどく具合を悪くされていますよ。”するとアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:“ああ。私はあなた方2人分の辛さを味わうのだ。”私は言いました:“(ゆえに)あなたには倍の報奨があるのですね。”するとアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:“ああ、そうなのだ。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[44])
2-フバーブ・ブン・アル=アラッス(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私たちがアッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)に直訴しに赴いた時、彼はカアバ神殿の陰で上衣を枕代わりにして寝ていました。私たちは言いました:“私たちを助けてくれませんか?私たちのために祈ってくれませんか?”すると(アッラーの使徒は)言いました:“あなた方以前の(正しい信仰)者たちは、地面に掘った穴の中に埋められ、鋸で頭を真っ二つに切られ、更に鉄の串で肉を骨から剥ぎ取られても宗教を捨てなかったのだ。アッラーにかけて。この件(イスラームへの迫害)は旅人がサヌアーゥからハドゥラマウト[45]まで、アッラーと羊を襲う狼以外には何も恐れることなく移動出来るようになるまでに、(最終的には)一件落着するであろう。あなた方は事を急ぎ過ぎているのである。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[46])
預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)のよき性質
●「アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は最も顔立ちが立派で、かつ最も容姿の優れたお方でした。彼の上背はとても高くはありませんでしたが、低くもありませんでした。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[47])
●「彼(アッラーからの祝福と平安あれ)は何かを喋る時には、それが分かりやすいように3回繰り返したものでした。そして人々のもとを訪れた時には、彼らに3回挨拶したものでした。」(アル=ブハーリーの伝承[48])
●「彼(アッラーからの祝福と平安あれ)は何か恐れるべきことに遭遇すると、こう言いました:“アッラー、彼こそが主。私はかれに何ものをも並べない。”」(アン=ナサーイーの伝承[49])
●「アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)が身を横たえるベッドは、木の繊維が詰められたなめし革製のものでした。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[50])
●「彼(アッラーからの祝福と平安あれ)はとても慈しみ深いお方でした。それで誰かが彼のもとにやって来て何かを(請われ、そしてそれを与える)約束をすれば、それが彼の出来ることである限り叶えてやらずにはいませんでした。」(アル=ブハーリーの伝承[51])
●「アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の言葉は、それを聞いたいかなる者も理解することが出来るような、(明瞭に)区切られたものでした。」(アブー・ダーウードの伝承[52])
●「彼(アッラーからの祝福と平安あれ)は何かをせがまれればそれを与えずにはいませんでしたが、そう出来ない時には沈黙しました。」(アル=ハーキムの伝承[53])
●「彼(アッラーからの祝福と平安あれ)はスィワーク[54]を手元におかずには寝ませんでした。そして起床の際には、スィワークで歯を磨いたものでした。」(アフマドの伝承[55])
●「彼(アッラーからの祝福と平安あれ)は(旅路において)後方に退き、弱って(遅れをとって)いるラクダの歩を早めさせ、(後方にいる者たちに)同乗し、彼らのために祈願してやったものでした。」(アブー・ダーウードの伝承[56])
●「彼(アッラーからの祝福と平安あれ)は酷寒の時にはサラー(礼拝)を(定刻の)最初の時間帯に済ませ、酷暑の時には(定刻の範囲内で)暑さのほとぼりが冷めるまで遅らせました。」(アル=ブハーリーの伝承[57])
●「彼(アッラーからの祝福と平安あれ)は何か患った時には、アル=ムアウウィザート[58]を読んで(両手に)息を吹き込み、そしてその手でもって自らの体を撫でたものでした。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[59])
●「彼(アッラーからの祝福と平安あれ)はコフル[60]を付ける時には奇数回付け、イスティジュマール[61]をする時にも奇数回行ったものでした。」(アフマドの伝承[62])
●「彼(アッラーからの祝福と平安あれ)は芳しい香りを好みました。」(アブー・ダーウードとアフマドの伝承[63])
●「彼(アッラーからの祝福と平安あれ)は喜ばしいこと、あるいは嬉しいことがあると、至高のアッラーへの感謝のためにサジダ(伏礼)したものでした。」(アッ=ティルミズィーとイブン・マージャの伝承[64])
●「彼(アッラーからの祝福と平安あれ)は何らかの問題に直面した時には、サラー(礼拝)したものでした。」(アフマドとアブー・ダーウードの伝承[65])
●「彼(アッラーからの祝福と平安あれ)は説教するとその眼が赤くなり、声は大きくなり、いきり立ったものでした。そして“朝に夕に、あなた方のもとに敵が来襲するのだぞ。”と言う、軍の警告者のようになったものです。」(ムスリムの伝承[66])